ひとりのおうち時間

夏に読みたい小説5作品!夢かうつつか…、幻想の世界へようこそ。

夏のジメッとした熱気には、ちょっと不思議な小説がぴったり。いや~な気分になったり、ひんやりする描写があったり、お化けがでてきたり…。魅惑的な季節におすすめの小説を5冊ご紹介します。

夏の熱気にのって、人の心もフワフワするこの季節。

照りつける日差しに朦朧とした中で、見つける蜃気楼。「ひと夏の恋」と表現されるように、その季節だけで完結される物語も多い。

そんな夏におすすめの少し不思議な物語をご紹介します。

心が囚われてしまわないように、お気をつけください。

1.暗いところで待ち合わせ/乙一

駅のホームで起きた殺人事件の犯人として追われるアキヒロは、盲目のミチルの家に逃げ込み、居間の隅で息を潜めて隠れる事に。人の気配に気づきながらも身を守るために気づかないふりを続けるミチル。かくして、奇妙な同棲生活が始まる…。

ホラー小説やミステリー小説など、ジャンルを問わない作風の乙一小説。

奇抜なアイデアにも定評があり、この作品でも盲目の女性の家に、殺人事件の容疑者が隠れ住むという、大胆な設定です。

始めは、ハラハラするストーリーですが、徐々に2人の関係が変わりはじめてから、物語の様相はガラリと変わりラストまで見逃せない展開です。

2.厭な小説/京極夏彦

「厭だ。厭だ。厭だ…」同期深谷が繰り返す愚痴にうんざりしながら帰宅すると、容姿が不気味な男の子がいる…。妻には、その子が見えていない。その日から、“私”の悪夢が始まる…。深谷をとりまくいや~な話のオンパレード…!

ピックアップしておいてなんですが、この小説は本当に読んだ後に後悔します。

タイトル通り、ものすごーく厭な気持ちになります。「厭な子供」「厭な彼女」「厭な老人」など後味最悪の7つのお話。

臭い、痛い、気持ち悪い、グロいなどなど、本気でひきます。精神を蝕んでくるお話ばかり。読んでいる時の自分の顔を鏡で見たら、きっとひどい顔をしていたでしょう(見てないですが)。覚悟して読んでください。

3.贖罪/湊かなえ

15年前、ある田舎町で女児が殺害される事件が起こる。直前まで一緒に遊んでいた4人の少女は、犯人らしき男と話しているのに、何故か顔が思い出せない。事件が迷宮入りとなったことで、死んだ少女の母親は、4人の少女にこう告げる-あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい-4人の少女に起こる悲劇…。

湊かなえ小説特有のじっとりとした読後感。

4人の少女が辿る人生は、常に薄暗く、見てはいけない人の奥深くにある“本性”みたいなものがチラつきます。罪を背負わされた4人が差し出す犠牲とは…。

あまりにも、暗く悲しく、読んでいるこちらも気をつけないと取り込まれそうになります。

彼女たちの心の機微に触れた時、胸がつかまれる作品です。

湊かなえさんの小説は、過去の記事でも紹介しています。
 静かな狂気…。湊かなえの文庫本を読む。

4.きつねのはなし/森見登美彦

アルバイトをしていた古道具屋の主から頼まれて青年が訪れた、不気味な屋敷。いつも着流しを身に付けただけの気味の悪い男に出会い、彼は魔に魅入られたのか…。表題作「きつねのはなし」をはじめ3つの物語が収められた本作。古都京都を舞台にしっとりと描かれる、闇の物語。

「有頂天家族」や「恋文の技術」など、軽快な語り口で綴られる森見作品とは一線を画す、“闇”の物語。

4つの物語が収められていますが、どの話にも登場するケモノや古道具屋。
しかし、果たして同じものを指しているのかということすら曖昧で、そこにも奇妙な錯覚を伴います。

古都京都が醸し出す、不穏な空気の中にとり込まれていく登場人物たち。
闇に潜む“何か”に、まんまと魅入られてみてください。

5.冥途・旅順入城式/内田百閒

「冥途」と「旅順入城式」の2作をまとめて1冊にした本作。「冥途」には18編、「旅順入城式」には30編が収められており、いずれも不可思議な物語。生の不安と不可思議な世界におおわれた幻想の世界を紡いだ物語の数々。

夏目漱石の「夢十夜」を彷彿とさせる内田百閒の幻想的な物語。夢かうつつか、夢の瀬戸際か、つじつまの合わない出来事や、突如現れる謎の生物など、突飛な設定ですが稀代の名手が紡ぐ言葉にじりじりとひきこまれます。

要所にちりばめられた、不可解で恐ろしい展開。不安定とは、こんなにも怖いことなのかとゾクリとします。

「冥途」に関しては、10年もの歳月を費やして作られたと言われています。
内田百閒が手塩にかけて作った物語、ぜひ堪能あれ。

夏の暑い日、日が陰ってくる時間帯は少しミステリアス。
そんな季節を楽しむように、不思議な世界へと導いてくれる小説を手にしてみてはいかがでしょう。

迷い込んだ世界から抜け出せなくならないように、くれぐれもご注意ください。