ひとりのおうち時間

おすすめ映画『雨あがる』で語られる珠玉の言葉たち

「人に優しくなれる極意」を知ることが出来る!今回は、感動の邦画「雨あがる」で語られる名言たちをご紹介します。ただの映画1本としてではなく、人生を変える1本としてぜひ観てほしい。

梅雨でなくとも雨というのは私たちの生活にいつもあり
それは時に、面倒でうっとうしく、
激しく降り注ぐときは、災害をもたらします。
しかし、作物を育て生活する人間には
恵みの雨でもあり、何物にも変えられないものですね。

そんな雨がもたらす、人の心の優しさを描く映画『雨あがる』を御存知ですか?
雨の降る日には、少し足を止めて良質な映画を楽しむのもいいものですよ。

『雨あがる』という作品

出典:local

山本周五郎原作、黒沢明脚本の紛うことなき名作。
正確には、黒沢明は脚本を完成させることなくこの世を去ってしまい、そののち助監督として脚本の制作を手伝っていた小泉氏が黒沢明氏から聞いていた構想や残されたノートをもとに補完してつくりあげたそうです。

この映画に詰め込まれた人の心は、健気でなお力強く、観る者の気持ちを雨があがっていくように晴れやかにしてくれます。

ストーリー

享保時代。武芸の腕前は一流なのに、人の好さが災いして仕官がかなわない三沢伊兵衛とその妻・たよの物語。旅の途中に降り出した大雨が続き、足止めをくらうふたり。ある宿場で数日過ごすことに。同じ宿場には、同じく雨があがるのを待っている貧しい人々がいた。そこに居合わせた人々との触れ合いを通してふたりの人生もまた動きはじめるのだった。

この伊兵衛とたよの夫婦のあり方というものに、とても心を打たれます。
貧しい人たちのために何かをしてあげたいと切に想う伊兵衛と、その伊兵衛の思うところを不器用さも不甲斐なさも含め寄り添うたよ。
日本人の心ともいうべき、慎ましさや思いやりがそこここにちりばめられています。
物がなく貧しい暮らしの中でも人の心が豊かであれば
そこには、笑いがあり支えあうという喜びが生まれるのだ、と。
大きな見せ場はありませんが、静かに心に響く作品です。

作中で語られる“珠玉の言葉たち”

映画の中で語られる言葉の数々は、至極当たり前のことのはずなのに、ちょっと立ち止まって反芻してみたくなるものばかり。

ここで、いくつかご紹介しますので、
映画を観るまで知りたくない方はご注意ください!


「今までにやまない雨はありませんでした。」

今日、今この時、晴れているならばやまない雨は歴史上なかったわけですね。
幸にしろ不幸にしろ永遠に続くことは、きっとないのだと改めて気づかされます。


「勝ったものの優しい言葉は、負けた物の心を傷つける」

お殿様との剣術の試合で、勝ってしまった伊兵衛が無様な負け方をしたお殿様を気遣う一幕があります。
この振る舞いに、伊兵衛の人間としての不器用さを感じます。
気遣いって、塩梅が本当に難しいものです。
大人になると余計に考えてしまいます。


「貧しい者はお互いが頼り。自分の欲を取っては生きにくいであろう。」

人は一人では生きていけないとよく言いますが、それを本当に理解した時に自ずと他人に対して優しくなれるのかもしれませんね。
「情けは人のためならず」と少し近しいニュアンスを感じますが、それよりも自分の欲を取る人の生きにくさを案じているようなセリフですよね。
どこまで、優しいんだ!

「人はみな悲しいんですから」

生きれば生きるほど、悲しみは必然的に増えていきますね。自分だけがつらいとか悲しいなんて、思い上がりもいいとこ。
誰しも一つや二つでは足りない悲しみを持ち合わせているものです。


「確かに主人は賭け試合をしました。しかし、大切なのは何をしたかより、何のためにしたかです。あなたたちのようなでくのぼうには、お分かりにならないでしょうが。」

貧しい人々を楽しませたいという気持ちで掛け試合をした伊兵衛を擁護するたよのセリフ。
良い悪いというのは、表面だけで判断すると見誤ることがありますね。
だからこそ、判断をくだす必要にある立場の人間には真贋を見分ける目を持っていてほしいですね。


「これだけ立派な腕を持ちながら花を咲かせることができない。なんと妙な巡り合わせでしょう。
わたくしこのままでようございます。人を押しのけず、人の席を奪わず、機会さえあれば貧しいけれど真実な方たちに 喜びや望みをお与えになさる。
このままのあなたも立派ですもの。」

映画を観進めていくほどに、伊兵衛の不器用な人の良さにやきもきしたり、悲しくさえなってしまう気持ちをたよのこの言葉が救ってくれます。

優しいと悲しいは、もしかすると隣り合わせにいて、いつでもお互いを転換できる感情なのかもしれません。
これは、当事者の感情というよりは見ている側の感情であり、「優しさ」を見ているこちらが「悲しい」気持ちになることが往々にしてあるのだと思うのです。
これを救ってくれるのは、たよのような理解者なのでしょう。
伊兵衛は、もしかするとたよがいなくても変わらない生活を送るのかもしれませんが、
たよの存在は第三者の私たちの心を救ってくれます。


誰かには誰かが必要。
そして、そこには優しさや誠実さが必要。

そんな当たり前のようなことを再認識させてくれます。

そして
まっすぐ生きることの滑稽さを肯定してくれる温かみを感じるのです。

少し疲れた心に、しとしとと沁みわたる素敵な映画。
週末、予定がないのなら
原作の短編と併せて手に取ってみてはいかがでしょうか?

あなたの週末にシネマを。

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『雨あがる』
2006年公開
脚本・題字:黒澤明
監督:小泉堯史
原作:山本周五郎
 新潮文庫「おごそかな渇き」
出演:寺尾聰、宮崎美子
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