ひとりのおうち時間

魅惑的な季節におすすめ。映画『パンズ・ラビリンス』

夢うつつか正気の沙汰か。迷い込んだのはどこなのか?現実なのか幻想なのか。ギレルモ・デル・トロ監督が描く美しくも残酷な夢の世界「パンズ・ラビリンス」。一度観ると落ち込むけれど、時間を置いてまた観たくなる…そうなった時は時既に遅し。あなたもパンズ・ラビリンスの世界にどっぷりはまっています。

ファンタジーは、子供が楽しむ世界のことだけではない。
私たちが日々、逃げ込む妄想の世界も夢の中で作り上げるストーリーもファンタジーです。

大人になった今でも疲れたら空想の世界に逃げ込みたくなることは往々にしてあります。

そんな時、こんな映画はいかがでしょう。
幻想の国に逃げ込む少女の物語『パンズ・ラビリンス』。

『パンズ・ラビリンス』 という作品

あらすじ

1944年スペイン内戦で父親を亡くし、独裁主義の大尉と再婚した母と暮らすことになったオフェリア。恐ろしい義父から逃れたいと願っていたある日、オフェリアは不思議な世界へと足を踏み入れることに。屋敷の近くに迷宮の入り口を見つけ、中に入ると迷宮の守護神が現れオフェリアに試練を与えると言うが…。

みどころ

オフェリアが迷い込んだ世界

少女が描く幻想といえば、キレイなお花が咲いていたり、かわいい生物が戯れていたりと色とりどりのカラーに満ち満ちている。そして、少女はキレイなドレスを着たお姫様。
しかし、オフェリアの迷い込んだ世界は、不安で恐怖に満ちた世界。血と泥で塗られた世界にほとんど色はなく、見通しは悪い。妖精の羽はしなだれ、体はガリガリでひからびている。そんな妖精に導かれたどり着いた先で、迷宮の守護神パンに出会います。
パンはオフェリアを一目見て、「地底の国のプリンセスだ」と言い、確かめるために3つの試練を果たさなければならないと彼女に告げます。

試練に挑むことにしたオフェリアが遭遇するのは、両の掌に眼球を入れ込んだ異形の怪物。
禁忌を侵してしまったオフェリアを執拗に追いかけてくる様には、芯からゾッとします。

さらに、魔法の本を開けば、ページは子宮の形をなぞりながら血に染まり、それと時を同じくして出産を機に命を落としてしまう母もまた血に染まるのです。
不気味な暗示を含み、不安な予感しかない世界。
オフェリアの唯一の希望は、自分がプリンセスたる世界に戻れることのみ。
彼女は、この厳しい環境で試練を乗り越えていくことができるのでしょうか。

ファンタジーなのか。リアリズムなのか。

本作は、実に様々な解釈がなされています。
それは、オフェリアが迷い込んだ世界は彼女の想像の産物か。いや、少女が創造した物語を超越している、なのか。
ギリシャ神話になぞらえた登場人物やモチーフが多用されていることがストーリーに深みと説得力、そして同時にオカルト的要素をのぞかせ、さらなる議論がなされるのです。
これも無垢なる少女の神話のひとつ、なのでしょうか。

いずれにせよ、オフェリアが現実逃避しているのは、間違いないのでしょう。
ファシズムの象徴のような冷酷な義父。唯一の味方であった母の死。母の命を奪って誕生した弟。
内戦下にある外界では、残虐な現状がどこまでも続いている。
この過酷な状況のなか、オフェリアの心が病んでいることは想像に難くない。
自分の居場所はどこなのか?
そこで救いを求めた先に現れた世界は果たして…。

話が佳境を迎えラストシーンを目の前に、私たちはさらに迷うことになります。
与えられた試練を忠実にはこなせなかったオフェリア。彼女は、幸せになれたのか、悲惨な最期となったのか…。

ぜひ、あなたの目で確かめでください。


映画や小説は、百人がみれば百人の答えがあるものです。ネットの上では、様々な解説や解釈がとびかいます。その中のどれかに賛同する時もあるでしょう。そのどれにも納得できない時もあるでしょう。あるいは、答えはいらないのかもしれません。でも、自分の目でみた感動はどれも間違いではないはずです。
誰かの話を聞くよりもあなたのその目でみてほしい。

空想世界の入り口へ。
あなたの週末にシネマを。

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『パンズ・ラビリンス』
2007年公開
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
出演:イバナ・バケロ
   ダグ・ジョーンズ  
   セルジ・ロペス 
   アリアドナ・ヒル 
   マリベル・ヴェルドゥ ほか
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