ひとりのおうち時間

おすすめ映画『潜水服は蝶の夢を見る』私たちはどこまでも自由…。

左眼しか動かない男が綴った自叙伝。それを映像化したおすすめ映画『潜水服は蝶の夢を見る』。「生きる」ということがキラキラ描かれています。

気温が急激に下がったり上がったりしている今日この頃。
体調を崩したりしていませんか。
少しでも異変を感じた時は、家でおとなしくしているのが一番。

小学生の頃、風邪で学校を休んだ時にいつも見ることのできないアニメを見るのが楽しくてしかたありませんでした。

大人になっても、体調が悪い時は布団の中で好きなTVを見るのが一番の養生。
身体や心が不調なら、ゴロゴロしながら素敵な映画でも見ませんか。
今回おすすめする映画は『潜水服は蝶の夢を見る』。

『潜水服は蝶の夢を見る』 という作品

あらすじ

昏睡状態から目覚めたエル誌編集長のジャン=ドミニク・ボビーは、左眼のまぶたしか動かすことがでいないことに気づく。意識ははっきりしているものの言葉を発することができない彼に、言語療法士のアンリエットは、まばたきでコミュニケーションをとる方法を教えることになるが…。

みどころ

左眼から見える世界

世界的に有名なファッション雑誌『ELLE』の編集長を務めていたボビーは、ある日突然、脳こうそくに倒れ病院の一室で目を覚ます。看護師や医師の応対に全く答えられないボビーは、徐々に自分の異変に気づいていきます。声も出せない体も動かない、唯一動かせるのは左眼だけ…。「ロックト・インシンドローム(閉じ込め症候群)」という症状だそうです。
ボビーが病室で目覚めた時から、私たちも彼の左眼の映像を目の当たりにしていきます。輪郭のぼやけた視界、1点の固定された場所から動かない映像。なんと不便なことだろう。ジャンの苛立ちは、まさに見ている観客にも伝染しそうなほど。

それまでは、3人の可愛い子供に恵まれ、雑誌編集者として女性関係も慌ただしく、人生を謳歌していただけに、この落差は彼の心を蝕んでいきます。
周りの人との会話はまばたきだけ。YESは1回、NOなら2回。
「子供たちをつれてきて欲しい?」という奥さんの言葉に、画面が2度暗くなることで私たちも彼の意志をしっかりと確認できる。その切ないまでの痛みを。顔すらも全く動かせないから、視界に入ってきてくれないと話している人の顔も見えない。一方的な会話に応えることもできず、可愛い子供を抱き上げることもできない。

そんな時、言葉を発せない彼のために言語療法士のアンリエットが会話できる方法を考案してボビーのもとへやってきます。その方法は、使用頻度の高い順にアルファベットを読み上げていき、該当する箇所で彼がまばたきするというもの。彼は言いたいことを1文字ずつ紡いでいくことになるのです。
もはや、絶望の淵にいた彼はアンリエットに「死にたい」と伝えることも。

しかし、彼はお見舞いにきてくれる子供や家族、友人たちとの触れ合いの中で少しずつ生きることへの希望のようなものを見出していきます。
そして、「僕はもう、自分を憐れむのはやめた」と。

実話を基に作成された本作。彼と同じもを見るという映像体験は、私たちの心をより締め付けていくのです。

20万回のまばたき

左眼だけしか動かせないボビーは、自分の状態をまさに潜水服を着ているようだと感じる。しかし、これまでの記憶や想像力は無限に広がり、自分がどこへでも行けることに気づきます。そして、彼は自伝を綴ることを決意するのです。1文字1文字、アルファベットを書き留めてもらい、それが文章になり物語になっていく。彼は、なんと20万回以上のまばたきで自伝を書きあげます。

20万回繰り返されるまばたきの途中、彼は何度でも自由になることができる。過ぎ去った甘い恋人との日々、世界各国へ旅した時の記憶は、彼から潜水服を取り去り蝶のように羽ばたかせてくれます。ボビーは、身体も動かず声も出せないけど、自由だった。そして、以前と変わらず家族を愛し、家族に愛されていたのです。

私たちは、いつでも当たり前の生活を取り上げられることがあるという可能性をつい忘れがちです。だからこそ、彼の絶望は想像を絶します。でも、彼はそんな時でも生きる楽しみは得られるということを教えてくれます。これまで生きてきた記憶は、自分だけのもの。むしろ、想像力の無限さは空を飛ぶことさえできるのだと。
「生きている」ということが眩しいほどキラキラしている本作を、ぜひ体感してください。


私たちは、当たり前にすぐ慣れる生き物。
良かった思い出も楽しかった映像もちゃんと宝箱に入れておかないと。
そして、たまには取り出してみるのです。
自分がひとりじゃないこと、誰かに愛されていること。
そのことは、信じられないほどの勇気をくれます。
この作品で彼のキラキラした命を感じたら、誰かに電話したくなるのです。
他愛のない会話を、したくなるのです。

季節を肌に感じる休日。
あなたの週末にシネマを。

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『潜水服は蝶の夢を見る』
2008年公開
原作: ジャン=ドミニック・ボビー
監督: ジュリアン・シュナーベル
出演:マチュー・アマルリック
   エマニュエル・セニエ
   マリ=ジョゼ・クローズ ほか

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