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【府中市美術館】かわいいフランス芸術「マリー・ローランサン」展/東京

20世紀パリで活躍した画家。愛らしいその作風は今見ても色あせない。

「かわいい」という言葉が世界に広まるほど、日本人のかわいい好きは熱狂的。だいたいのものは「かわいい」で通じ合える。日本語ほどの多様な言語において、これで全てがまかなえるとは女子たちの共通認識はすごい。そんな私たちにうってつけの企画展が現在開催中です。

きっと私たちが「かわいい」と言ってしまう世界をご堪能ください。

マリー・ローランサン(1883-1956)

1883年パリ生まれ。夢見がちだった少女時代を過ごしながら、画家を目指すようになります。その後、絵を学びながら知り合いを通じてモンマルトルにある「バトー・ラヴォワール(洗濯船)」というアトリエ兼古い安アパートで画家ピカソや詩人アポリネールらと青春時代を過ごしています。31歳の頃、結婚直後だった彼女は、第一次世界大戦の影響で7年間にも及ぶ逃亡生活を余儀なくされます。戦後は、離婚し単身パリに戻り、絵画だけでなく舞台装置や衣装デザインなどでも成功しています。

『マリー・ローランサン展』 みどころ

波乱万丈な人生がよく語られるマリー・ローランサンですが、今回の展覧会では創造者としてのマリーの、ひとりの「画家」としての姿に焦点を当てた構成、約70点の展示になっているそうです。
時代ごとに切り分けられた彼女の作風は、もちろんその人生とシンクロしますが、画家としてどういう表現をしているのかをじっくり見ることができそうです。
どんな作品が展示されているのか、少しだけご紹介します。

第一章 1904~1909年頃

彼女が20歳くらいの頃、本格的に絵を学び始めたマリーは始めこそ丁寧にデッサンを重ね基本に忠実な絵を描いていましたが、ピカソやアポリネールの影響を強く受け、「新しい絵画」を意識した作風へと変貌していきます。
下の2つの絵画を見比べてみると、その変化は一目瞭然ですね。

第2章 1910年代前半

アラサ―時代のマリーは、ピカソやジョルジュ・ブラックが確立した「キュビスムの画家」として世間から認知されていました。キュビスムとは、簡単にいうと立体的な絵画のこと。それまで、一点の視点からしか描かれなかった技法に対して、様々な視点からとらえたものの形を一枚のキャンバスに描き出すという当時、斬新だった手法です。

しかし、マリーはキュビスムの理論には興味がなく、その形や色合いに傾倒していきます。明らかに前章で描かれている絵とは色合いも線の書き方も違うことが分かります。少しづつマリーらしい色使いになっているようです。

第3章 1910年代後半~1920年代

結婚をし、戦争のため亡命生活を送っていた時代です。しかし、パリを離れたことでまたしても彼女の作風は変化します。仲間や友人から離れた彼女は、孤独のなか自分とじっくり向き合う膨大な時間をもつことで彼女だけの独特なスタイルを確立していくのです。

はっきりと描かれていた輪郭の線は消え、色合いは濃く様々なパステルカラーが多用されるようになっています。とても柔らかくカラフルで軽やか、まさに「かわいい」というにふさわしいデザインです。この時、マリー・ローランサンというスタイルが完成するのです。重厚なものこそ芸術と思われていた時代には斬新な作風だったようです。

第4章 1930年~晩年

独自のスタイルを確立し人気画家となった彼女に、肖像画を注文することが上流婦人の流行とまでなっていました。それでも彼女はさらに自分の絵を変化させようと試みています。パッと見違いは難しいですが、平面的で軽やかだった女性の体がより立体的に変化しています。女性の体特有の肉質がよりリアルに描かれているようです。夢見がちな少女から現実世界へ戻ってきたのかもしれません。そうして、彼女はパリの自室で静かにその生涯を閉じたそうです。

展覧会情報

会期:2015年9月12日(土)-12月20日(日)
会場 :府中市美術館
   東京都府中市浅間町1-3
時間:午前10時-午後5時(入場は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(11月23日をのぞく)、
    11月4日(水)、11月24日(火)
観覧料:一般900円


「かわいい」とは至極、抽象的ではありますがマリー・ローランサンの絵はやっぱり「かわいい」。それは、色使いだったり、線の柔らかさだったりと色々とありますが、しかし描いていた彼女が愛らしい人だったからではないかと個人的には思うのです。夢見がちな少女時代、恋多き青春時代、結婚・離婚、孤独と自分、女という人生を幸にしろ不幸にしろ謳歌した彼女のスタイルが、その絵画に現れているのかもしれません。
女性らしい実に感覚的な「かわいい」をぜひ、その目で感じてみてください。

※展示会情報は、変更されている場合もあります。事前にご確認ください。